うたかた


あかいはな

むかしむかし このばしょには 小さな女の子が すんでいました
 
女の子はひとりぼっちでした
だいすきだったママも
やさしかったパパも
ある朝、目が覚めたときには いなくなっていました
 
女の子はひとりぼっちですが
少しもさみしくありませんでした
パパとママがいなくなった日
ベッドにはふたつ お花の球根がありました
 
女の子はパパとママからのプレゼントだと思い
かだんを作り球根をうえて
まいにち水をあたえました
 
植えた球根は育ち
夏がすぎ 秋にはまっ赤な花がきれいに咲きました
 
そうして時がすぎ女の子が大人になったとき
真っ赤な花は一面に咲いていました
 
花言葉は悲しい思い出
 
パパやママがいなくなったことは
女の子にとって悲しい出来事でした
しかし
年月を経て悲しい思い出は
沢山の花たちと分かち合うようになりました
 
女の子が涙するたび
真っ赤な花はそっと頬を撫ぜ
さわさわと泣き声を隠してくれます
 
女の子はこの優しい花を
世界中の悲しい思いをした人々に
わけようと決意しました
 
悲しみを分かち合う花として
この花に彼岸花と名前をつけました
 
 
世界中に散った彼岸花は
沢山の悲しみを見つめ
共に涙し
時には慰めました
 
女の子の手元には
花は一輪も残りませんでした
しかし
女の子は寂しくはありません
何故なら花にはもう一つ
花言葉がありました
 
「また会う日を楽しみに」
 
世界中に渡った花が
地を越えて戻ってくること
女の子は知っていたのです
 
花はいつか
蔓珠沙華と呼ばれるようになり
人々に愛される花となりました










彼岸花の花言葉で童話風に。