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死にたがりの君と生きたがる僕。6



覚悟は決めていた。
早く死にたいとも思っていた。
しかしそれは死とは無関係の場所にいる自分だからこそそう願ったのかもしれない。怖くはない。むしろ良かったのだと思っているが、ひとつだけ未練がある。
リンに出会うまでは無かった未練だがこういったカタチで死に逝くことが決まって、もっとリンと一緒に居たいと願うようになってしまった。
後悔はない。一人生きてゆくくらいなら、今すぐに死んでリンが生きてくれるのなら、それで良かった。リンと己の命、天秤に乗せて傾くのは前者だが両方をとれるのならばそれが良かった。約束を、守りたい。守れるはずがないと知りながら、破るつもりで交したわけではなかった。

らしくないと思ったが、リンにプレゼントを買い、手紙を書いていても何を書こうかと迷い、数枚に渡る手紙になった。でも読み返して馬鹿らしくなって、全部捨てて一言だけにした。ごめん、も違った。さよならも。リンに出会ってからの五年間は会う前の長い長い時間よりもずっと、生きていた。だから、自分を生かしてくれた、死にたいという願いを叶えてくれた、リンに向けた真っ直ぐな想い。
一緒に居てくれて、本当に嬉しかったのだ。
この異質な存在を否定も笑いもせずに信じて理解しようとしてくれたことが。
だからどうか、リンが自分を責めずに、前向きに生きてくれることを願いあの一言を文字にした。
それだけで十分に思えた。
「リン」
眠りにつけば、次はリンの一部になっている。
共に生き、リンが見たものを共に見て、死ぬ時も一緒だ。
大丈夫。
悲しむ必要はない。
本当は、隣に居たかったけれど。
色んな店を教えてやりたかったけれど。
たくさん、互いのことを、下らなくて他愛ないことでも話していたかったけれど。

それはもう叶わないから。

リンの中でずっと守り続けたいと願う。


そしてその身体が朽ちたとき、

人は魂が巡り巡って生まれ変わるというから。


きっと何処かで。

数百年先、記憶はなくても魂が憶えてる。



生きて死んで生まれ変わって再び出会った時、約束を守るから。



だからそれまで待っていて。














死にたがりの君と生きたがる僕。 完





生きるということ。
完結です。